2010年4月26日月曜日

日本の総合専門学校のベトナム進出

この間、ハノイの当校に日本の総合専門学校の大手と中大手が3校も視察に来た。うち一校はオーナーが数名の社員を引き連れてきて、勝手なことをああだこうだ言ったあげく、帰国後何にも連絡がなく、その傲慢さと下品さが丸出しであった。他の2校は誠実な視察であった。その相次いだ視察は、日本の専門学校業界の現況の深刻さを表しているということだろう。先日、テレビで「中国は経済の伸長に人材の育成がまったく追いついておらず、これからは日本の教育産業、コンテンツ産業の進出が中国の要請でもあり、重要だ」「工場の進出だけでなく、ソフト系・教育系の業界にとって歴史的なビッグチャンスだ」とかなり華々しい言葉が画面に躍っていた。カメラは中国内陸部の企業や学校を視察している日本の教育・トレーニング関連企業・団体の模様を賑々しく映していた。

上記の視察とこのテレビ番組の内容はシンクロしたもので、一般論で言えば全くそうだろうと思う。我がベトナムも、中国の後塵を拝しているとはいえ、中国よりも「やりやすそうだ」のイメージが幸いし、ベトナムも今後この様な分野の進出が盛況となろう。それも遠くない時期にね。中国の教育に関する法的なことは僕は知らないので、ベトナムの事をいえば、WTOの規定に従って2009年に開放された訳だが、「教育は国家にとって、重要な政治的、民族的な要素である」ので、実態はかなり違うようだ。従って、教育分野の進出はまだまだ難しく、時間のかかる作業となっている。

彼ら大手総合専門学校は、学校自体の進出と、ベトナム人富裕層の子弟の日本への留学(就学)促進の二本立てを考えている(近々留学と就学の区別は無くなろう)。そのうち当面は留学(就学)の斡旋と受け入れ事業が主軸となろう。ご存じかも知れないが、平成20年に文科省は、「留学生30万人受け入れ施策」を公表し、現在もそれに向かって省内や関連財団が動いている。だが、現在、留学生はたかだか12万人だ。その内8万人は何と中国人学生である。その期待の中国人学生や高学歴エンジニアが、不景気の日本にいても埒があかず、最近、帰国数が増えているという。環境を見れば、まったくなるほどと思う。だから、この一連の大手総合専修学校、専門学校の動きはこの文科省の現況に対応もしている動きでもある。現在ベトナム人の日本在留者総数は約40000人。そのうちの留学生が約3000名、さらにこのうち優秀理工系大学・学部や大学院に現役でいるのは、400〜500名ぐらいと思う。東大工学部に30名、東工大に30名(それぞれつかみ数)というかんじである。

この大手専修学校らの動きは、この上記優秀学生の大学留学とは、大分ちがったものになりそうで、いくつかの課題点がありそうだ。現在ベトナムの人口は8600万人で、生活に余裕がある中産階級は1200万人(エコノミスト誌)らしい。従って、その専修学校らの一連の動きはこの200万〜300万世帯の富裕層家庭の子弟を日本に送りだそう、否送り出せると踏んでの計画と思われる。僕の危惧はこの辺りにある。彼らの仕事は優秀なベトナム人学生を日本の優良な大学に送り出すことにはない。当然、自校の「ファッション、電子、CAD、アニメ、フードコーディネーター、日本語、スポーツトレーナー・・」などの学校や課程に入れるための留学(就学)促進である。

僕はそれらの学校の授業内容や授業料、また、就職の現況に対して一概に懐疑的であるというわけではない。しかし、日本の学生が減少しているからアジアの金持ちの子供をドンドン送り出し、受け入れようという魂胆が透けて見えるし、もともと大概の総合専門学校は過剰な学費をとり、低位レベルの高卒者に「プロ幻想」を付与し、甘いモラトリアムを提供しているだけの印象が強い。多くは本物の就職準備スクールになっているのだろうか。大いに疑問が在る。今後、ベトナム政府や日本文科省と相談して「入学する学校が客観的にみて問題ないのか。特に授業内容と授業料が見合っているのか。また、就職に不安がないのか。」を評価するベトナムの機関を作った方が良さそうだ。そのような一定の歯止めが可能な公的機関がないと、日本国内で留学生や就学生のトラブルが目に見えて増大する可能性が高い。それは、いままで親日的であったベトナム国民の日本への信頼を急低下させることに繋がる。つまり、大量でその上就職率に問題を孕んでいる「専門学校」への就学・留学は、とても危険な要素を含んでいると言うことだ。

日本に行ってから解ってくるわけだが、「授業料の割に授業のレベルが低い。日本で友人となった日本人に聞いたら、自分の学校は評判の良くない学校であった。プログラムが就職できる学力に到達できそうもない。企業の就職活動で門前払いを受けた。専門学校と大学の社会的な評価が全く違う、騙された!」など、起こりえる。ベトナムで留学を決めた際、正確な情報もない中で、いわば「騙されるように大金を払い」渡航してしまいかねないのだ。ご存じのようにかつてベトナム人研修生の脱走事件が相次いだ時期があった。10年ぐらい前だろうか。これを思い出させるようなトラブルが大量に再発しはじめたら困るなあ。日越関係者として、大いに危惧を持っている。


(*2012/01/26 加筆: 現在、当校はベトナムに進出予定の専門学校を支援する体制にある。マンガ、アニメ、会計、グラフィック、IT、料理・ケーキ、ファッションなどが、有力と思われる。)



■ 昨日、日曜のお昼前の「田原さんのサンデープロジェクト」の後番組にソフトバンクの孫社長と国家戦略相の仙石さんの対論があるというので、見た。すぐに解ったことは、日本の政治家の多くはとくに最近の民主党の人はバカ殿と日本の悪役小沢を抱え、毎日ひいこらひいこら政局だけに対応している内に、管さんも同類だろだろうが、日本の100年の計を構想する力を失っていると言うことだ。それに比べて、孫さんは、上手い。結論から言うと大した構想を彼は、言ったわけでなく、相変わらず通信だけで国を再興(再耕)するという計画を並べただけにすぎないのであるが、プレゼンのプロの説得力は政治家の数段上を行く。1:まず、落ち着いている。2:言葉がやさしい。3:プレゼン内容に見合った解りやすいチャート図、4:他者の話をじっくり聞く態度、5:龍馬を使っている。1〜4は当たり前のことではるが、ちゃらちゃらしゃべる人物に溢れているワイドショー的なテレビでは、極めて好感度を醸し出すことになる。

彼は、20数年前の創業時に、初めて借りた小さなオフィスで3名のアルバイトの学生を前にして世界一のコンピュータソフトの会社になる、いやなれると宣言してアルバイトの学生たちを呆れさせたようであるが、単なる大言壮語の人物ではなく、「難しいことを易しく、易しいことを深く、深いことを愉快に、愉快なことをまじめに」話すことが出来る才能を持った人だと思う。この言葉は先日お亡くなりになられた井上ひさしさんの”名言”だ。

そして、特に上手いのはやはり上記の5、つまり龍馬のような幕末の志士たちのイメージを自社の社内的にも、業界的にも、さらに昨日のようなテレビでも上手に活用できていることだ。孫さんは、本心から龍馬を尊敬しているかどうか、解らない。むしろ、彼にとってどうでも良いのかも知れないとも僕には思える。本当に敬愛しているのは吉田松陰かも知れないし、高杉晋作、あるいは勝海舟かもしれないし、アジアは一つの岡倉天心であるのかもしれない。でも、彼は今坂本龍馬を活用しきっているのだ。僕のような我慢できない「前衛好き」は、30〜50%ぐらいな多くの民衆が関心あるものは、格好悪くて良しとしない。僕なんかは忍耐が出来ないので、0%〜せいぜい多くても5%程度ぐらいの少数のトンガッタ人だけが関心を示す事象とか人物しか良しとしない。でも、「新参」だけれども正統派のビジネスマン孫さんは器が違う。何が大切かを深いところで知っている。しかも、孫社長は昔から「ジジイ殺し」で有名であった。先輩たちは何時の世でも「過激でやんちゃだけれども、配慮の行き届いた若造」が大好きなのである。僕もそうだしね。

今回、彼の提案は「i Pad」とか、アマゾンの「Kindle」などのような簡便なツールで電子教科書をつくり、小学生から大学生の全学生に無料配布するものなど、彼らしい「成長産業」構想を解りやすく語った。僕からすると、是非、彼には「農業の未来」とか、通信以外で実体経済を形作る成長産業の生成にキチンと触れてほしかった。でも、孫さんがそこまで語ってしまったら、仙石さんも無用だし、その辺の政治家は誰もが不要となってしまうね。そこまで考えて、政治家にもそれなりのプレゼンスを残したつもりで彼は、全部の総論は控えたのかもしれない。そのときのテレビ視聴者は、彼に政治を任せたら面白いかもと、自問した人も多かったと思う。そのぐらいのカリスマ的魅力は在ったよ。でも、彼は番組のラストに彼らしくなく不用意に「僕に国の経営を任せてくれたら・・」とぽろりと、カメラの向こうの国民に語ってしまった。むむむむむ・・。これが、テレビの怖さだ。

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