2009年6月13日土曜日

読書考 最近版

ドストエフスキーの「カラマーゾフの兄弟 第四巻」(光文社刊・亀山郁夫訳)も610ページまで行ったので、そろそろと思い最終巻である第五巻を買った。意外に薄くて軽い。最終ページをめくったら360ページほどしかない、今までで一番薄手だ。それも物語部分はエピローグとなっており、60ページほど。残りは「ドスとエスキーの生涯」とか「解題」とかだ・・。やっと、頂上の袂にきたか、と言う安堵感が率直に胸に沸き起こる。

神戸女学院の内田樹さんの「街場の教育論」もの凄く良い本ですね。4月始めに読了したもので、誰かに推薦したくて、したくてたまらなくなった一冊です。ハノイの当校の教員全員に買ってあげたい気にもなったが、「他人様に書籍を送るのは、失礼で良くない」と亡くなった妻にかつて諫められたことを思い出して止めた。この本の内容は、中高の教員などを対象にした彼の教育論授業の採録が元になっています。定説に流されない根源的な捉え方、平易な表現、理解しやすい展開などサービス精神も溢れている。前書きからユニークだ、のっけから「お買い上げありがとうございます」とある。嬉しいじゃあないですか。学者だろうが詩人だろうが、本を著して販売したらありがとうございますは、ただしい。そういう余裕の心を持って学者先生も文学者も自説や自著を販売してもらいたいものだ。

大学の現役の教員で冴えた頭と論理で、ぐっと魂をつかめてるのは、この内田樹(たつる)教授と早稲田の生物の池田清彦教授ぐらいだろうなあ。今、双璧でしょう”冴えと切れ”では。もちろん、東大の上野千鶴子さんら、勘定していけばいろいろ居ないわけではないが・・ね。

で、事はいきなりやってくるのです、ベトナムでは。13日記述予定。

2009年6月7日日曜日

スクリーンがくれた仄かな夢

今は7日日曜の早朝3時半。眠くない。何となく書かずに居れない集中心が脳とか手に満ちている。先日、「ダビンチコード」をDVDで見た。どう見ても駄作としか思えない。比べるのも無理があるけれど、ジャン・ジャック・アノー監督の「薔薇の名前」を思い出して、これも見た。こちらは異端審問官との闘いであるが、キリスト教のおどろおどろしさに触れる作品としては、雲泥の差がある、というか「ダビンチ・・」は映画としてはB級と言っておこう。で、僕はトムハンクスの相棒を務めるオドレイ・トトウにだけ、視線が行っていたのである。死んだ女房にそっくりだったからだ。二十代後半の妻とね。亡くなった人間はひいき目に思い出が昇華しているので、美しく思えるのだろうが、でもまあ、よく似ているのであった。

そう言えば、この女優は「アメリ」で評判になった人だと思いだし、前に見たときにどうして気がつかなかったのだろうかと、不思議に思って「アメリ」見始めたら、コマーシャルや広報関係の媒体だけで、見ていた気になったようで、実は初めての鑑賞であったことに気づいた。
「アメリ」は最高だね。フランスらしいエスプリ満載、遊びいっぱいの映画で、大分前の「地下鉄のザジ」を想起しながら、見終えた。「地下鉄のザジ」はルイマルの初期の傑作中の傑作、あまり評価されない嫌いがあるが、どうしてどうして、こういうのがザ・映画だとおもうよ。で、オドレイ・トトウである。かみさんは「アメリ」のキャラでは、ちょっと似つかわしくないが、アメリでもなく、ダビンチコードでもなく、「太陽はひとりぼっち」とか「スエーデンの城」「赤い砂漠」などのミケランジェロ・アントニオーニの映画の常連女優のモニカ・ビッティのようなちょっとけだるさを演じるような役を与えられたら、最高だし、亡くなった妻に更に似てくるだろうと思われる。多分、うちの娘や息子もそう思うだろうナ。

これとは別に、3,4年前、ロビン・ウイリアムス主演の「奇蹟の輝き」を見たときに釘付けになったことがあった。ロビン・ウイリアムスの妻アニー役で、自殺し天国の夫を追う女優に、だ。アナベラ・シオラという。一線級の女優でもないようだから、まったく知らなかった麗しい人だ。仕草や物腰、醸し出す雰囲気も亡くなった妻晃子その人に見えた。見てて釘付けってこういうものなのだなと、初めて体験した。映画の内容が天国でのストーリーだし、天国のCGが油絵タッチでその美しさも初めて見るモノであったからなおさらだった。映画として決して一級作品ではないが、妻に瓜二つの女優を戴く映画だもの、大事な映画として大切に記憶している。VUONGさんには、ちょっと悪いけれど、大切な思い出だし、それを時々丁寧に思い出すのが、亡くなった人への祈りの一つだろうと考えている。鎮魂と言うには大げさだけれど、美しい過去は脳裏にしっかりと仕舞っておきたいし、奥に仕舞い込んだ物を時折空気を入れ換え太陽光に晒すのと同じで日々思い出して名前を声にし、僕の脳内で彼女の笑顔のイメージを紐解く・・・僕の重要で意識的な儀式なのである。個人的心情を晒すのはとても恥ずかしい。恥ずかしいだけでなく、書くのもどうかと思わぬでもないが、表に部分的でも表すことで、心が安まるような気がしている。

で、アナベラ・シオラとオドレイ・トトウが双方で似ているかといえば、別にそう言うわけでもない。二人の女優の共通点は黒髪で目鼻立ちがはっきりしていることだけだね。妻晃子はそれぞれに似ているが、この女優二人が相互に似ているということではない。彼女は2003年12月20日午後、病床で天命を受け入れた。10年間という長い期間、癌との静かなる死闘を尽くした結果であった。彼女は紛れもなく聡明な女性であった。美しく聡明でいつも善意と愛に溢れていた。東京学芸大学付属大泉小学校、筑波大付属中学・高校を出て1967年早稲田の第一法学部に入学した。その後ベトナム反戦闘争のバリケードのキャンパスで彼女と僕は出会った。1969年初夏であったと思う。

最近見た映画・・
「スタンドバイミー」見たのは何度目だろうか、良い物はいい。相変わらず名曲が胸に迫るね。僕は、仙台での小学校や中学時代の沢山の冒険譚の記憶にいっとき浸れる。
「大いなる陰謀」R・レッドフォード監督の面目躍如の傑作。まさに名著ベストアンドブライテストのとおり、作戦はワシントンのオフィスで決定され、片や青年たちは泥まみれで死んでゆく。
「中国女」ゴダール先生の過去の栄光。でも、やぱっぱあ、凄い。
「リチャード・ニクソン暗殺を企てたおとこ」ショーペンが正に適役。
「ダビンチコード」つまんない。
「ヒットラー最後の12日間」凄い映画だ、本当のヒットラーの女性秘書の証言が元になった作品だから、リアリティがあり、全編ドイツ語だから、さらに本格的だ。

「アメリ」愛すべき映画的映画。
「プライベートベンジャミン」まあまあだが、薦めるほどじゃあない。
「薔薇の名前」さっき書いたが、ダビンチコードがおもろくないので思い出して借りて見た。必見。異端と正系って吉本隆明の著作のタイトルだが、これはキリスト”業界”の血で血をあらう争闘。
「ストレンジャーザンパラダイス」ジャームッシュの快作。いつ見ても良いねえ。
「時計仕掛けのオレンジ」40年ぶりにみた。キュブリックの先見性に改めて敬意。
「チェ 28歳の革命」S・ソダーバーグ監督でも、むずかしかったのであろう。偉人の伝記ものは、ドキュメントでもないし、芸術映画にもなりにくい。一定の水準の面白い映画ではあったが、傑作にまでは至っていない。残念というより、仕方ないのだと思う。チェを改めて世界の青年に知らしめた功績を大いに讃えよう。

「ブエナビスタソウシャルクラブ」何せライ・クーダーがプロデューサーでバンドに加わり、ヴィム・ベンダースが監督だ。面白くないわけがない。浮き浮きの傑作。キューバのしゃっきり老ミュージシャンたちの楽しそうな老境サルサ。
「素顔のままで」デミームーアがストリッパーと言うところで、勇んで借りたが、どうもこうもない作品。
「アラモ」中学校1年ぐらいの時にロードショウで見ただけだから、まあ50年振り、とおもいきや、これは、ジョンウエインの監督作品でなく、リアリズムなリメイク。もし、アラモで勝利し、テキサス州がデビー・クロケットらを先頭にして当時独立し、アメリカに併合されなかったら、北米の政治地図も大分変わったかも・・。
「続・荒野の七人」最悪。40年ぐらい前映画館で見て、同じく「非道いな」と言ったような気がする。
「奴らを高く吊せ」テレビで小学校6年の時毎週見ていた「ローハイド」のあんちゃんのロディことクリント・イーストウッドが、「荒野の用心棒」で世界デビューした後、ハリウッドに凱旋デビューしたのがこれ。なんで、こんな最低のシナリオ選んだのだろ。

「ボビー」弟ロバート・ケネディが暗殺される1日を多様な人々が集う演説会場のホテルを舞台に臨場感たっぷりに展開する。必見の傑作。アンソニー・ホプキンスがプロデューサーである。ちょい役も豪華出演者で驚かされる。
「アラビアのロレンス」名画中の名画だろう。改めてデビット・リーンが「サー」の称号を持っているのが、身に染みるぐらい気高く剛毅な映画である。ロードショウで見た後、テレビやビデオで4回程度みているが、今回はじめて、パソコンの小さな画面で見た。砂漠の超望遠を使ったシーンなど、やっぱり、シネラマとかでまた見たいものだ。英国や列強の政治的詐欺の中でロレンスは自滅したのだろうが、国際政治の暗部は砂塵で隠蔽されているのもある意味で見事だ。

「カーポティ」大傑作。トルーマン・カーポティの伝記ものだ。僕は1967年大学に入学して間もなく買ったのが、彼の代表作「冷血」であった。その冷血の取材の過程を追ったのがこの映画だ。当時サリンジャー、カーポティ、ノーマンメイラー、カミュ、ポール・ニザン、サルトルなどが僕らの魂を席巻していた。かれは、4人を殺した殺人犯に友人として近づき、取材しつつ、取材対象である犯人である死刑囚が自分にとって「金脈」であると気づく・・。取材とは何かが問われる。
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・2009年10月「救うのは太陽だと思う」
・2009年12月「爆笑問題の失笑問題」・・・・・1日で1440のPV
・2010年1月 阿倍仲麻呂はハノイの知事である。
・2010年2月 MAC・MAC / 立松和平さんの死。
・2010年3月 「サンデープロジェクトの打ち切り秘話」
・2010年12月 映画「ノルウエーの森」の失態
・2011年1月 「お笑いの山崎邦正のベトナムアルバイト」
・2011年3月 メイドインジャパンから「Made by JAPANESE」の時代認識へ
      3月 「大震災をベトナム人は語る」
・2011年4月 映画「東京物語・荒野の7人・シンドラーのリストほか」
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