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2011年4月21日木曜日

ドミンゴさん、この時代だから第二国歌ありかもね / ドナルド・キーン先生

■スペインの歌手であるドミンゴが先週あたり公演で来たようだ。いわゆる三大テノールの一人であり、唯一の現役だ。世界からのアーチストのキャンセルが増える中で、彼の日本に寄せる気持ちは他の人とちょっと違うね。彼は今回の東京のコンサートの最後のアンコール時にいきなり日本語で「うさぎ追いし彼の山、小鮒釣りし彼の川~、夢は今もめぐりて、忘れがたき故郷・・・」と「故郷」を歌い出したらしい。選曲のセンスが流石だね。日本の唱歌の代表だもの。ドミンゴさんの切々とかつ力強い日本語に会場の全員が和唱して、そして多くの聴衆が滂沱の涙を流したようであった。終演後、目を真っ赤にはらした観客たちがニュースカメラの前を幾人も通りすぎた。

会場にいたというテレビの女性アナウンサーも目蓋を熱くして、そのときの模様をニュースのコメント時に語っていた。唱歌「故郷」は本当は長野あたりを見て作られたようである。でも、イメージは東北であり関西でもあり実はかつて何処にでも在った日本の里山の風景と立志や親を詠った歌である。だから、何処の地方の老人でも、現在の中学生でもイメージ豊かに歌える数少ない唱歌の一つだと思う。もちろん「早春賦」もいいし「夏は来ぬ」だっていいし「赤とんぼ」も名曲だね、「朧月夜」も悪くない。でも「故郷」は季節に偏りがないし、空間も多様だし、志も見える。

今更、君が代を云々するのも野暮だし面倒だ。「新しい国歌に」とは、言うまい。アメリカの第二国歌の「 God Bless America 」のように非公式から、公式行事までどんな時でも誰の反対や非協力に合わずに堂々とみんなこぞって歌える歌が日本に在っても良い。第二国歌として唱歌「故郷:ふるさと」を意識しませんか。今僕らは「日本を信じよう」とか「日本はチームだ」「がんばろうニッポン」と相互に励まし合っている。その「紐帯」として、誰でもが自分のふるさとを思い起こす歌が在っても良いと思う。僕は国民運動的なことはあまり与しない。でも、故郷が被災地仙台である僕にとっていま、必要な歌の一つであると強く思っている。

■コロンビア大学の名誉教授のドナルド・キーンさんが、3月11日以降に日本国籍を取り、日本人に帰化した。そして、日本に永住を決めたという。国際的な放射能の風評被害に対する先生なりの反発というか抵抗なのだと思う。88才のご老体にも拘わらず、元気だ。僕が大学生の映画青年時代、キーンさんは「映画芸術」や「映画評論」「キネマ旬報」に論陣を張っていた。その頃コロンビア大学の教授でありながら、日本の書評や映画評を旺盛に執筆していた。テレビでのインタビューも立派なネイティブ日本語で映画芸術などを語っていた。困難な時だからの外国の友人たちの誠実な思いに、僕らは絶対にきちんと応えて行かなければいけない。信念を見せてくれた人に僕らもきちんと信念を見せねばなるまい。

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