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2010年11月21日日曜日

大卒者の就職率57%の実相 / 「天皇の世紀」


*当ハノイ日本アカデミーの教職員のメンバーの久しぶりの記念写真です。ハノイビンコムタワービルそばのレストランにて。食事の後に勢揃いです。

■さて、就職氷河期の再来らしい。前より深刻の様だ。企業の採用意欲の減退とか、採用不能な環境は、我々海外で優秀青年の就職を日本企業に提案している学校にとっても、バッドニュースだ。暗澹たる気持ちになってしまう。企業の特に中小企業の採用意欲が後退することは、当校のような海外にある就職プレップスクールにとっては、困った事態なのだ。採用数が、目に見えて激減する訳だからね。でも、それだけではないんだ。今度のことはもっと複雑だ。むしろ、その数字とは逆にベトナム人の採用は今夏から、漸増しつつある。問題はこの数字が一人歩きし、日本のアジアや世界でのプレゼンス(存在意義、価値)の低下に直接繋がってしまう事なのだ。

日本のこの20年間の長期低迷は大変知られており、ベトナムの大学生なら大抵知っている。景気は上下し、今は不景気。だがまた、しばらくすれば上昇すると、アジアの若者が「今までのルール通りの」景気として理解しているのなら助かる。それならプレゼンスの低下には繋がらない。でも20年も低迷が継続し、ソニーに「冴え」が無くなり、トヨタも(誤解も多いが)権威が落下し、中国とかロシアとの島や国境のトラブルも解決不能で、ハーバード始め海外の有力大学に行く日本の若者が減少、毎年3万人の自殺がある国、アニメやマンガ、ゲームのサブカルだけが孤軍奮闘している日本の今の姿を、ベトナムの感度の高い青年たちは凝視している。こういう時期にこの57%の数字の作り出す影響は痛い。

日本の裾野の広い産業構造と高度で研ぎ澄まされた技術力。品質の高さとデザイニング力、もちろん今でも世界一であろう。欧米の老舗も舌を巻くクッキングの世界とホスピタリティーとサービス分野、これも今でも誰にもとやかく言わせないさ。「クール・JAPAN」も「カワイイ」も、優れた日本の文化だけど、いわずもがな日本の伝統的芸術と工芸品は今も圧倒的魅力にまだまだ満ちている。でも、アジアの青年たちとか世界のマスコミにとって、今の日本は退色しかかった形容しがたい社会に見えているのだと思う。輝きがないというか、冴えがないというか、間違いなく「不思議さ」が消え、感動を与える躍動感が減退し、低下しているのだ。

先日ハノイで日本の文科省関係のJASSO主催の「日本留学のためのイベント」に行った。僕は初めての見物なので、驚く事も多かった。文科省の「30万人留学生受け入れ計画」が仕分けの嵐の中でまだ生きているかどうか解らないが、会場には有力国立大学はじめ、私立も有名大学が勢揃いしていた。京大、東北大、大阪大、奈良女子大など最有力大学がブースをデンと構えていた。早稲田、慶応、立教など私立の雄と言われているところもかなりブース展開しており、日本国内の日本語学校や専修学校含めて多分100校程度は出店していたと思う。この催事の近年の大学などの出店数の増減と、来場のベトナムの高校生や大学生、親御さんの数字がどうであったか、まだ伺えていないが、印象としてはそれなりの混雑で、盛況と見えた。とくに、集中していたのが京大、大阪大、東北大と、早稲田慶応で、人だかり状態。で、反対に気の毒にもお客が誰もいない暇そうな大学や、日本語学校も多かった。つまり15〜20校ぐらいの有名大学に集中の印象であった。学生(お客さん)が、じり貧だからアジアの金持ちの子弟を入学させようと目論んでいる三流大学や同レベルの専門学校の意図は、ベトナム人の青年たちに既に見透かされているようだ。参加関係のデータが今まだ無いのでこの体験を正確に分析できないが、「日本留学試験」(JASSO主催)の高得点を獲得し有力大学を目指すベトナムの優秀層の日本への関心が、そう一挙に落下している訳ではないようだ。ちょっと安心。2006年秋に「日越パートナー宣言」を交わし、日本とベトナムが若者の人材供給と雇用促進で提携し、お互いの互恵関係を定めた国同士の良好な関係の現れの一つなのだろう。

この国の大学生の就職率が最悪の57%だと言う。その数字の出し方は、卒業生総数から、大学院や留学の進学者を引いた人数を母数にして就職者数を割ったものだ。マスコミによると毎年20パーセント程度は、学校に報告もないグループ、つまり、「ふらふら」している遊び人から、世を捨てて閉じこもっている人、フリーター、公務員試験浪人までおり、したがって、天井数は80%らしい。であれば、就職率80%を誇ったバブル時代は、三流大学やインチキ大学も含めて、実態はほぼ100%誰でも就職できたということになるのだから、相当凄い。それはそうと、学生の報告に依っているので、一人三つも四つももらった場合の内定数も混在しているので、知っててそれを含めて就職率をアップさせている不埒な三流大学も数多いので、就職率自体が、数字的に根拠が薄いんだ。有力国立大学、有名私大は、正式に数字を出していないようだが、毎年進学者、留学者を含んで70〜80%は就職できている様だ。大学院進学の数字は把握しやすいので、これ以上にはならない天井数字が80%である事を考えれば、有力大学とそれに近い伝統的大学の就職希望者のほぼ100%が本年も適当な企業や公務員、団体に収まっていると言うことだ。歴史的最悪数字の57%は、ここではピンと来ない。

以前テレビのニュースを見ていたら、女子大生数人がインタビューを受けていた。画面では、ヨーロッパを国名と思っていた者が一人、インドだったか国名は忘れたが、あるアジアの国を探すのに世界地図でヨーロッパやアメリカ大陸あたりばかり見ていて、見つからないと嘆く者一人。インタビューのアナウンサーも予定通り(シノプシス通り)女子大生がバカなので、ニコニコしていたが、あまりにも非道いので、心配になり正解が出そうな次の質問を放った。「日本はアジアにありますか?ヨーロッパですか。アメリカ大陸ですか、南極大陸にありますか?」4人は「アジアだよね。ヨーロッパ?中国だっけ?南極はちがうよねえ・・」とゾンビに肉体ごと乗っ取られたような答を4人で内部議論していた。おいおい〜、これが女子大生の実態とは言いたくないが、少なくともこのレベルは現実に居るのだ。足し算、かけ算ができない大学生。大学入学後に、高校の教科書を使って、復習の授業をやらざるを得ない一部の大学群。本当に無残だ。日本には現在大学が750、短大と他が400位で、つかみの数字で合計1200校らしい。ベトナムは8600万人で、大学が120校、そのうち首都ハノイに35校ある。全く環境が違うので、安易に数字だけを並列できないわけだが、ベトナムはまだ、優秀で意欲のある者だけが、大学に行く社会なのだ。

で、テーマは就職率57%の事だ。仕事が無い、無いと言いながら、何処まで真剣にアタックしているのだろうか。中小企業のメーカーやベンチャー、これからの介護・CO-メディカル系、海外の日本企業、海外の地元企業、若い内だけでもガテン系・・などに面接にも行かないで、困った困ったと親子で嘆いている輩が多いのではないか。大田区、墨田区、東大阪などの日本産業の裾野をささえる中小メーカーには、世界的な技術が宝のように眠っている。なぜ、そこのドアーをノックしないのだい?ドアを開ければ、多様な仕事場が待っていよう。少々給与が少なく、会社は小さくとも、自分がひたむきにがんばれば、自分の提案を社長が直に認めてくれる、そういう職場が無数に存在している。何故本気になって、自分の実力を発揮できる仕事を探さないのか。なぜ、溶接や旋盤をやらないのか。大卒者がそれをやっていけない法規があるのか。実際の天上数の80から57を引くと=23% この23%は、文科省の無能な政策のため、無理矢理に大学生にさせられた犠牲者なのだ。本当に気の毒としか言いようがない。上記の女子大生4名もその犠牲者なのさ。そのうえ、近年は話題のゆとり政策のこれも犠牲者の何百万人が、去年あたりから社会に出てきたようだ。前途洋々として、社会から祝福されるべき青年たちが社会全体から、さげすまれバカにされている時代って、今まであっただろうか。これは既に喜劇の領域だとしか言いようがない。

先ほど、ハノイでの「留学イベント」の模様を語った。特に優良大学にベトナム人の高校生、大学生の親子連れが殺到していたと書いた。
僕はいままで、東北大学の工学部大学院のハノイ試験実施プロジェクトに関わったので、知っていたが、あの優秀で有名な東北大の工学部の大学院でさえ、学生の質が低下しているという。その質とは、情報量とか、知的能力と言うことではなく、若者が持つ特有ながむしゃらさ、熱気などの精神に関係したことだと、担当の教授は僕に何度も話した。確かに”数学を解析するのにも豪腕さが必要”とよく聞くね。そういうがむしゃらなパワーとかハングリーさ、お腹だけでなく知識に対するハングリーさに充ち満ちているのが、青年だよね。そういう青年・学生を東北大工学部大学院は具体的に東南アジアで探し始めているのだ。そこでその会場の幾つかの大学ブースで担当者に聞いてみた。総じて大学関係者の意識は東北大学と同様な考えのようだ。アジアとの具体的交流を始めたいという平板な答を言う人も多いが煎じつめると、優秀なアジアの青年を入れる事での大学の質の防衛し、世界の荒波に対抗しようと言うことであろう。たいした根拠のないデータだが、東大が世界で20番そこらで、早稲田なんて300番以下程度だからね。でも、いろいろ話をお聞きすると、大学自身が何処まで本気になっているのか、まだ不明だといって良い。

僕は、今就職率57%という「就職難の国」へ、ベトナムの優秀でやる気のある青年エンジニア候補者を送り出している。23%(80−57)の卒業生つまり、15万人ぐらいの大学生が就職できていない現状がある一方、国内の日本企業は中国人、韓国人、ベトナム人、インド人などの優秀者をどしどし、採用している。ワーカーも含めると中国人は70万人、韓国人は20万人ほど日本に在留している。楽天の本社などは、今春400名ほど外国人を採用したと聞いた。つまり、この57%の就職率の実相はどういう事なのか。

1 私の知っている中小メーカーの社長さんたちの主な言を借りれば、こうだ。「まず、エントリーも、面接も数が少ない。もちろん、ゼロではないが、面接に来た人の質が問題だ。好意的に見ても、1年以内に辞めそうな人物か、仕事の初歩さえおぼつかない感じの人間が多い」という。これは大卒、高卒を問わずだ。若者をここで非難するつもりは毛頭無いが、面接に来ても、採用の基準に達していないのだ。どんなに小さい会社でも、しっかりした独自の採用の計画や基準はあるからね。

2 日本の中小企業で、技術を承継し、品質を守ろうとしている企業は、はっきり言って、その就職できない23%という15万人を採用したいとも、しようとも思っていないのだ。だって、大企業に使えない学生は中小企業だって使えないよ。中小企業には中小企業の誇りと伝統がある。逆に会社が小さい分、人材の質の低下は企業としての致命傷に繋がるのだ。例を言えば、日本の産業を特に牽引してきた自動車産業はガソリンから「燃料電池」や「電気」へとエネルギーが変わるだけでなく、電気自動車などはエンジンが不要になり、1台の自動車の部品が3万個から1万個に激減するのだ。すなわち日本の産業構造が大きくシフト変動するのだ。したがって、産業の裾野が変わるこの大きな変革期にバカは採用できないのさ。むしろ、下請け構造から脱しようと、より良い人材を求め始めているんだ。そこに学問の基礎部分が不安な「ゆとり世代」を押しつけられても困るのだ。余裕の大企業が彼らを引き受けるべきだという政策提案したいと誰かが言っていた。

言いたくないが、80−57=23%の中に入ってしまった学生は、中小企業も彼らに採用意欲は無いと言うことだ。冷静に受けとめてほしい。いいかい、世界中に面白くて、意義のある仕事は山ほど転がっている。発想を変えてくれ、疲れた学生諸君。
学生の諸君、ごめんなさいね、バカ呼ばわりして。本当に気の毒に思う。君らだけの責任じゃあない。自分を信じて、別の方向を模索するといいよ。突飛と思われようが、新しいことを探せよ。歴史上始まって以来じゃあないかなあ。若者が大人にバカにされているなんて、あってはならない事態だぜ。歴史はいつも若者が大人をバカにし無視して、時代を超越し新しい時代を築いてきたものだ。三井物産にせっかく入ったと言う青年が海外駐在をいやがったり、アメリカを始め世界へ出ていた留学生が激減している内向きの時代の話題を聞くたびに悲しいなあと心から思う。

この「日本の大卒者の就職率57%」は世界のジャーナリズムの中で行き交うだろう。実態を物語っていないこのデータがアジアの青年たちの日本への興味や渡航意欲を減退させて行く。僕は、当校の優秀学生たちに「日本の大学生の70%は君らの競争相手じゃあない。心配するな。むしろ、日本に居て頑張っている何十万人かの韓国、中国、台湾、インドの青年たちが怖い敵だ」と叱咤・アドバイスしている。

■大佛次郎「天皇の世紀 文春文庫十二巻」の第四巻の130頁に来た。やっとだね。このブログで確認すると8月4日に読み始めたようだ。10月10日のブログには、第二巻の320頁とあるから、まあ順調に読み進めている。マイケル・サンデルの「これからの正義の話をしよう」は、前に書いたようにイントロが平板なビジネス書のようで、僕の読む気をそいだので、現在は気の毒にもトイレで読む本にランク下げ。トイレじゃあ、小用では流石本は読まないので、読書は大便に限られるわけだが、長くて10分だから、そうは進まないね。前田愛の「幻景の明治」(岩波現代文庫)は、7〜8年前に買った本だが、読み直していると、新たな発見がある。いま、僕自身が幕末・明治の本を立て続けに読破しているので、理解がちょっと進んだ感があるね。天皇の世紀の第三巻と第四巻は桜田門外の変を含む水戸の怒濤のような攘夷の風が、長州や薩摩を動かし、島津久光がクーデターのように上洛し、その後に江戸への進軍。力付いた朝廷・禁裏勢の巻き返しが開始される。禁を解かれた一橋慶喜。大久保一蔵(利通)や岩倉具視、伊藤博文、桂小五郎(木戸孝允)下級の官僚・武士たちの台頭と、東善寺襲撃事件とか生麦事件とか外国人排撃テロルが相変わらずの詳細な資料の引用でリアルに示される。

大佛次郎関係を調べていたら、この「天皇の世紀」の第八巻を読んでいるとか言う人のブログがあり、「龍馬暗殺のところが以外にあっさりしていた」と不満げに書いていた。バカじゃあないの、この人。大佛さんが明治革命という大河をどのように表現するか、想像できていなかったのかよ〜。龍馬にゃ悪いが、ここは2〜3行で済ましていいのさ、僕はそう思っている。司馬遼太郎が神話化してしまっただけさ。今回のNHKもやり過ぎだよ。幕末の先鋭的青年は龍馬だけじゃない。勝海舟の「氷川清話」(江藤淳編)では、龍馬は西郷の子分扱いだぜよ。

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