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2010年8月18日水曜日

嗚呼、青春の「旅の重さ」/ ニッポン専門チャンネル欲しい!!

  《ニッポンチャンネル》は、下方に記述
■御嶽山に登る人々のドキュメントをNHKでやっていた。昔から日本では山や岩、川などにそれぞれの神を見てきた。なかでも山には畏敬と恐怖が混じり合った多様な信仰が各所に在るようだ。御嶽山は、映像で見ただけで恐れ多い神が居るような気配があるね。山岳好きの息子はここに登攀したことがあるのだろうか。今度会ったときに聞いてみたい。で、さきほど、アエラをパラパラ見ていたら、四国のお遍路さんの記事が特集であった。アエラ流の「登山ガール」などのアラフォーものの一環の記事らしいが、この四国お遍路巡りの記事は僕の目を引き込んだ。書き出しにあの初々しい名作「旅の重さ」のことから切り出していたからだ。松竹映画「旅の重さ」は僕にとって大切な映画の一つだ。

胸が「キュン」となるとはよく言ったのもだ、一瞬にして初々しい新人女優高橋洋子を思い出した。久しぶりのこの感覚。何かが疼くね。昔の忘れ物を幾つか思い出す。この「旅の重さ」は、お遍路をたどっていた少女の旅路であったらしい。そうであることを僕は全く覚えていなかった。カメラマン出身の斉藤耕一監督のちょっと軽いが巧みなカメラワークが、青春映画のリズムを軽快に刻んでいたし、全編ながれる吉田拓郎の「僕は今日まで生きてきました〜♪♪」も当時の僕らの胸にストレートとに届く詞であったからね。シナリオのシチュエーションなど目に入らなかったのかも。不思議な大人たちとの出会い。今を超えようと震える身体。でも、大人の世界に行くことを拒絶したいと号泣する。この映画は青春の巡礼さ、まさしくね。高橋洋子のみずみずしい笑顔と肢体。青春の苦悩を素直に受け入れている少女の全身が全部鮮やかであった。1972年の僕を圧倒してくれた。その年の3月僕は結婚したばかりであったし、闘う学生や若者たちが一敗地にまみれた季節でもあった。多分、高橋洋子のみずみずしさは、僕の新しく始まっていた妻晃子との生活と二重写しになっていたのだろうと思う。♪♪私は今日まで生きてみました 時には人の助けを借りながら 私は今日まで生きてきました そして明日からも 同じように生きていくでしょう〜〜♪と。
それにしても、10年前ならほとんど視線に入ることがなかった四国のお遍路さんとか自然信仰について知りたいと体や心が意図せずに動いているようである。今月末で62才だ。多くの先達もそうであったようにマルクス主義を含む西洋哲学だけでは近づくことができない文明史的な積み重ねが我々のアジアにはあるのだろうと思う。

■「天皇の世紀」第二巻にはいっているが、何回目かの「ゲバラ日記」とか他のも読んでるのであんまり進まない。でも、先日まで読んでいた「福翁自伝」「アーネスト・サトウの外交官が見た明治維新」や「勝海舟の氷川清談話」との事実の整合性もひしひし伝わってくるので、まさにドキュメントのリアリティを享受できる。
下記は、また例によって、ベトナムで発行する本の原稿の一部だ。そのうえ、この文章は、去年まとめて書いた「海外広報のだめさ加減」原稿の一部をベトナム人向けに編み直したものだ。でも、大切なことだと思うので敢えててまたここで現した。

■私はこの十数年ほど、ベトナムのハノイ市と日本をほとんど毎月往復している。ハノイにも家があるのでテレビ番組を見ることも多い。ベトナムのテレビ番組で特徴的なことは、いくつかのチャンネルで「ディズニーチャンネル」「韓流ドラマ」「中国歴史ドラマ」を朝から晩まで放映している事だ。チャンネルを回してあちこち見ているが、それらは洪水のようだ、と言っておこう。毎日見ている、君らはどう思うか。でも、日本の映画は、たまに流れるだけだよね。

私は1948年生まれ、いわゆる団塊の世代である。ベトナムの若い君らには解らないだろうが、1945年に第二次世界大戦が終わり、その頃同年齢が年200万人生まれたのだ。それが、数年続いたので、「塊(かたまり)の世代」と命名されている。対アメリカ戦争後に君の国で子供が一気に増えたのと同じ現象さ。僕らが小学校に行った頃、少年少女の当時の世界の中心は「ぼくら」「なかよし」「冒険王」「少年サンデー」「少年マガジン」などのマンガ雑誌と数々のアメリカ製テレビドラマであった。今から、約50年前の事だ。
以下のタイトルは連日、僕らの家庭で放映されていたアメリカのテレビドラマだ。『うちのママは世界一』『パパ大好き』『ビーバーちゃん』『名犬ラッシー』思い起こすだけでも楽しい。『ローハイド』『名犬リンチンチン』『ルート66』『ララミー牧場』なんて格好良いのだろう。毎晩僕らをわくわくさせたハリウッド製プログラムの数々。僕たちはこれらのアメリカ映画を見てアメリカ市民の生活に憧れ、アメリカ的勇気と正義を学んで大きくなった。大人の背丈もある冷蔵庫、大きな牛乳瓶、そして各家庭には必ず大きな車が在ることを知ったのであった。男女の逢い引きが、気軽なデート (Date)と言う言葉に置き換わったのも僕らが中学校の頃つまり1950〜1960年代初めの頃であった。

聞くところによると1950年代当時に日本のテレビの各キー局では、それらのハリウッドテレビドラマをほとんど無償か超廉価で仕入れて放映していたようだ。言うまでもない。アメリカの組織的文化戦略の一環であったからだ。ごはんは太るから輸入小麦のパン食にしようなどというキャンペーンもあったことを思い出す。また、保守的な大家族制度から、アメリカ的な一世代だけの核家族への社会的再編作業なども、これらハリウッド製テレビ番組と一体なって、広報戦略のもとで、展開されたのだった。僕らは、当時無自覚だったけれど。あはは、君らも、今まさに無自覚だよね。

アメリカはおそらく、戦後日本での広報戦略スタイルをこの60年間、世界中で継続しているだろうと思う。現在のその先兵はディズニーチャンネルなのさ。結果、英語の普及は地球上で圧倒的だ。韓国も、中国も同様に広報に力を入れ始めている。韓国では最近コンテンツとその販売の世界戦略を統括する省庁が発足した。日本への「韓流モノ」の攻勢もその一環なのだろう。ベトナムで日本映画の放映があまりにも少ないので現地テレビ関係者に聞いたら、日本の番組は高額すぎると言う。いま、ベトナムの或る局ではエミー賞受賞のドラマ『アグリーベティー(NHKで深夜放送している)』の「番組フォーマット」(番組のコンテンツとノウハウの売買)を購入し、ベトナム版連続ドラマを制作し、ゴールデンタイムに放映までしているのだ。私は今ベトナム以外の海外事情には不案内だが、国民の大半が日本を敬愛してくれているベトナムに於いてさえ、テレビなどを通じた広範な国民への我が日本の広報活動は完全に出遅れているのが歯がゆい。大切なことは、他の国の文化も摂取しつつ、ベトナム独自の文化を守り、そして育成してゆくことである。だから、君らからすると余計なお節介かもしれないが、ベトナムの文化の今後を心配しているんだ。文化というかセンス(sense)の持ち方もね。アメリカ文化に体中「毒された経験」がある先輩として。

我々の日本はこれから、技術移転も含む裾野産業構築を基礎にした各国国民との「共生的な外需」の方向に行かざるを得ないと、これも多くの人は既に予感している。そう言う意味で中国や韓国だけでなく、ベトナム、タイ、カンボジア、ラオスなどのメコン流域地域などもこれからの正にパートナーになっていくだろう。
我々がそれらの国々に提供できるものは多い。僕らの自負さ。「環境分野などを中軸とした技術とサイエンス」や「観光」、「サービス、サブカルチャー(マンガやアニメなど)、食と農などのコンテンツ分野」などは、成長分野であると同時に外需向けに相応しい。そうであるなら日本語の流布拡大と日本社会をアジアの国民の皆さんに身近に感じていただく広報活動を貿易、投資、企業進出に先駆けて本気で始めるべきなのだ。東アジア共同体構想の下にアジア政策を推進する場合、言わずもがな広報はそれらの基礎を作る先行のファンダメンタルである。だが、君らが知っているように、日本の海外広報は弱い。橋を建設したり、道路、ダムを造っているだけだ。日本はベトナムへ毎年約1000億円のODA予算を投入していても、おそらく、ベトナムの国民の多くはそのこと自体を知らない。知らせる努力も足りないが、支援の分野が建設・土木に偏りすぎているのだ。バランスが悪い、ゼネコン主導の分野がいつまで、のさばるのか。

はっきり言って、日本の良質な番組(世界の黒沢明監督や手塚治虫先生が代表する日本の良質な映画、ドラマ、アニメ、バラエティー、ドキュメンタリー)を日本政府は日本の各テレビ局や映画会社から計画的に買い上げ、アジア各国の主要メディアに無償で大量に供給したらいのだ。各国の国民が現地語で視聴できる独自の「チャンネルニッポン」を各国に設置することだってODAの予算の一部を確保するだけで、十分に可能だ(NHK国際放送は各国在住の主に日本人向けの日本語放送のみ)。そのほか現地新聞の活用とか、現地語のインターネットWEB展開など経費「縮減」の施策はいくらでもある。

世界語になった日本語は多い。中でも最近「もったいない」が世界語になったことは、未来志向のグリーンニューディール時代の嚆矢(こうし)だろう。日本古来のリサイクルシステムや節約の心から最先端技術まで、私たちが蓄積した“世界財産”は途方もなく膨大だ。ベトナムの知的な青年諸君、どうだね。ぼくの言いたいことはわかるね。僕ら日本は、ベトナムを兄弟と考えて、相互協力して未来を切り開くのが、一番現実的だと考えている。さあ、君はどう思う?     
 

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