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2010年6月14日月曜日

不思議な日本のメンタリティー

久しぶりに「ワンス・アポーンナタイム・イン・アメリカ」を見た。セルジオ・レオーネ監督の名作、大河作品だ。これまで、4,5回見ていると思うが、昨日も新しい発見もあった。何回見てもエンリオ・モリコーネのオカリナをつかったメロディは言うまでもなく秀逸だ。1920年代から、60年代のNYの雰囲気を物悲しく現している。街のチンピラから連邦準備銀行の長官まで上り詰めた男と親友の物語。僕の映画ベスト10に入れている男同士の葛藤と成長のドラマだ。息子に是非見せたいなあ、と改めて思ったぜ。

これも、前項とおなじ原稿の一部さ。ベトナムの青年向けに書いている。
■「不思議な日本の社会のメンタリティー」
日本の大卒者の入社時の給与(初任給)は、いくらだか、知ってるか?企業によって違うし、地方によっても違う。東京が一番高い地域だ。平均的には2000ドル〜2300ドルだろうか。その企業の社長の給与はいくらかわかりますか?実はせいぜい10倍程度なのだ。信じられないだろう?でも嘘ではないんだ。日本の経済産業省などの外部団体が出しているデータに出ている。アメリカとか、中国は年収50億円(5000万ドル)とかの人物も平気で存在する。しばらく前のディズニーの社長の年収が100億円で、かなりニュースになったことがあった。その2国とも典型的な資本主義国だからである。それに反して日本の社会はあくまで公平で、ヒューマン精神に満ちている。先ほどの多くの月給20000ドル前後のサラリーマン社長は多い。勿論株やストックオプションをもてる機会も多いので、実収入はもっとある場合が多いかも知れないが、日本のドグマは、「公平・平等」に尽きる。去年始めて野党に転落した日本の保守層を代表する資本主義綱領の自由民主党でさえ、「私たちは、貧しい、弱い人の味方です」は、常套句だし、「お金持ちのための政策を実行します」などとは、口が裂けても言えない。福祉や平等は、棄てられない看板だし、戦後50年間政権党であったこの自民党はどう見ても「柔軟な(いい加減ということでもある)社会民主主義」と言った方が良いぐらいなのだ。資本主義の王道を主張している例えば、アメリカの共和党や英国保守党とは、大分違うのだ。

知ってるよね、世界のインテリ、政治家に「世界で始めて成功した社会主義国は、日本だ」と言われ続けていること・・。国際政治に詳しい人には、この「揶揄(やゆ)」は理解されているんだ。会社の中でも社内手続きなどもかなり民主的だぜ。民主的というより、公平さが重要な価値基準となっている。大抵、何でもみんなで会議です。社長が勝手に独裁的に方針を出すことは、特に大会社はほとんど無いと言ったらいいでしょう。これじゃあ、中国や韓国、アメリカに負けるぞ、と日本国内でも溜息に溢れるほど、異常なほどに手続きは丁寧だ。外国人には信じられないほどバカまじめなのだぜ。
勿論、今後の国際競争力を考えれば、現況の日本式スタイルだけでやっていくのが難しいのは解っている。けれども、アメリカのエクセレントカンパニーと言われているリーバイス(ジーンズ)、グーグル、SASインスティチュート、コカコーラ、アップルコンピュータ、マイクロソフト、シスコシステムズなどの先進的な企業の人事制度は、「売り上げ成果に巨額ボーナス」のような制度を脱して、日本の終身雇用を現代的にアレンジした制度が徐々に増加しているという。だから、今後の日本企業の運営の方策は模索中だが、「終身雇用」は「世界遺産」として残るかもしれないね。アメリカ的な価値基準では「非効率、不経済」と思われていたことが息を吹き返し、21世紀中半には、アメリカ的なもののアンチテーゼである「終身雇用などは、非効率だが必要なこと」「みんなで分け合うしかない。資源もエネルギーも維持していかなければならないから」・・が常識になる時代の予兆かもしれないのだ。良い例ではオランダの徹底したワークシェアリングへの評価が高まってきた。

その意味で、日本の終身雇用や年功序列は、問題が多いし、若者からすると、「ふざけるなあ」なのだけれど、実はうまく現代風に改善すれば、人間の歴史に裏付けされた、「妙案」なのかも。たぶんそう考えた方がいいぜ。
僕は1990年代の中半に2回ばかりこれらのフィランソロピーやコーポレートシチズンシップを徹底した米国のエクセレント企業とそれらの団体(BSR)に取材に行き、感銘を受けたことがあった。実は、「成果の上がった人物だけ、あるいは有能な者だけに大金」、反対に「そうでない人は、差別され、降格か、解雇」のような競争を純化したような「成果主義・能力主義」制度は、実は、最終的には成果が上がらないことが実証されてきたからだ。それに直面してエクセレント企業群は、システムを変容させつつあったからだ。日本の伝統的なシステムに近づいた形でね。だって、世の中は普通の能力しかない人が大半だからだよ。人間は自分にとって不都合で不公平に感じる制度やルールに誠意を費やそうとはしないものだ。原理は実に簡単なのさ。

日本は、2001年から2006年まで総理大臣をやった小泉純一郎がアメリカとくに、父ブッシュのマネをして、市場原理資本主義を導入し、日本の自民党ではじめて、金持ちや大企業を優遇し、弱者の福祉などを削減して「格差社会」を戦後始めて現出させた。といってもアメリカや中国に比較すれば可愛い程度ですがね。その揺り戻しが、今の民主党政権であり、野党に引きずり下ろされた自民党だ。で、その結果、両者共にさらに、弱い者や普通のサラリーマンへの社会保障や福祉の大事さ言い、そしてそれをメインのマニュフェストに入れ、弱者の味方を標榜しているのさ。これが、不思議な国ニッポンなのだ。

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